10月下旬から高知県立美術館でスタートする「大絵金展 極彩の闇」のためのチラシやポスター、図録かわりになる250ページ以上の絵金定本、看板などの準備を進めている(さらにCMもあるらしい)。

この上、この夏からやらせていただくようになった美術館ニュース改め「KENBI LETTER」のレイアウト(前回のリニューアル号はうまく切り替えできなかったが、担当のMさんも少し慣れてきて、今回から結構ガラリと「変えたかった方向」に変わりそう。もちろん絵金特集)もあるので、なんだかんだとここまでの1ヶ月とこれからの1ヶ月くらいは絵金まみれの時期なのである。

本については、図録としても、また書籍として各地の本屋でも売るものなので、なかなかできない経験になりそうである(とかこの時期にいうてるのはかなり危険なのだが)。しかも、高知でも出版系や印刷の会社にでも勤めていなければなかなかやれない上製本。並製本とはノドの考え方もちょっと違うし、並では当然決めることのないスピンやハナギレの話もある(付けないけど)ので、それだけでなかなか面白い。これまで作ってきた本はどれもこれも並か無線ばかりなもんで。

そして、今回これもまたはじめての経験なのが、東京のgrambooksというやり手編集者さんも入って校正や製本に関する差配をしてくれていることだ。grambooksは大竹伸朗のど派手な本とかも出しているところで、担当のKさんは穏やかな人なんだけど仕事はさすがに丁寧で細かい(高知にありがちなガハハえいやんそれでいこうや or ハイあんたに任せたきね後はやってや ・・とかで終わらない)。高知ではなかなかこうした書籍に関する編集専業の人を見かけないし、いたとしてもこういう美術書ができる人はまあ当然ながらいないわけで、改めて(というかはじめて)編集の仕事というものに触れるような感じすらするわけである。

とはいえ、以前同じく東京で編集をやっている妹が、帰省ついでにウチの事務所を「まるで我が事務所」のように活用した折にも、雑誌編集の現場の片鱗を見たような気はした。なるほどとにかく編集ってのは差配なのだなと。心配りなのだなと。とにかく細かくないとこりゃ無理だなと(自分には無理だなと)。ウチの事務所のように編集もしながらデザインをしつつ取材をしつつといったザックリ事務所(まあ田舎ならではなのだが)ではなかなかできんわいと。

まあなにはともあれ、編集者と一緒に仕事をするのはとにかく初めてなわけである。
で、先週東京に行ったのは、このKさんと打ち合わせをするためだったのだが(それまで一回高知で一瞬しかお会いしていなかった)、画像の取り扱いや紙の問題など、不確定要素が多かった印刷に関して印刷屋さんも交えて協議をさせてもらい、翌日には印刷所との話が決まらないとなかなか決めにくい表紙のことなども紙屋さんに赴いて決めたりして、一気にいろいろとまとまった。

こういう速度でモノゴトが決まるとなかなかうれしい。印刷所では、実際にその場でこの紙だったらいくらになるか、取り合いは良いかという話も即座にわかり、その場で紙を決めることができた。なので、半日はかかるかなと思っていた打ち合わせも2、3時間で終わった。あんまり言いたくないけど、都会の速度というのはなるほどこういうことなのねというのも改めて思わさせられる。

まあKさんによると、東京でもこんなに話が速くてコトのわかっている印刷屋さんと紙屋さんはいない(つまりいい担当者さんを狙い撃ちしている)ということだったので、そこそこ例外的事例なんだろうなとは思うけど、高知ではなかなかできない「分業」の良さというか、楽しさというか、そういうのをこの仕事をやりはじめてから初めて実感した次第なのである。