2日目に戻る

今日は美術館めぐり。が、いちおーART NPOの理事を務めながら、実は正直それほどパリの美術館巡りにゃ興味が無かったりする。

たとえば誰かと一緒に美術館に行ったりすると、おいらはとにかくパーッと見てしまう。一点一点の前で立ち止まるだなんて、よほど好きな作家でないかぎりほとんどない。ましてやルーブルやオルセーなんていう規模になってしまうと、それはもう地獄とでもいうべきものだとすら思っていた。なにより、本屋でお腹が緩むように、美術館を歩いていると足のどっかの小骨がパキパキと鳴りだす。それが気になって仕方が無い。

まーでも「パリ行きました」「ほんとー!ルーブルは行った?」だなんてもし聞かれて「行ってません」だなんて言うと、まず誰もが顔をしかめるだろうから行っておく、というわけで。

・・・が、まーやっぱり行って良かった。だいたいヨーダイがタケムラは多いので、注意が必要なのだ。

さて、ホテルで出発時に2日間有効のミュージアムパスをゲット。これがあればまー大抵のミュージアムは入り放題なのだ。あー、また自転車じゃないけど、なんでこの程度のことが高知でできんかなあ。文化財団系列だけででも、こういうわかりやすいことやったらえいのにとイラつく。一応四国のミュージアム88カードラリーみたいのもやってるけど、名前を聞いただけで既にちょっとわかりにくい。ホームページもこれまたわかりにくいし。

そう、こういうのはただ単に「ミュージアムパス」でいいのだ。システム系は簡単明解であることが何より重要ですよ。分かりにくい構造を表に出しちゃ絶対誰も使わない。まあこれまた高知はそういう意味で「分かりにくい」ことが多いわけですけど。

で、奥様の足の調子が悪いので、chatlet駅からメトロでLouvre Ruvoli駅へ。ちなみにこのLouvre駅、内装がなんか他の駅とは明らかに異なる美術館調だ。もちろん全部レプリカにしても、こういうのはなんか気分が盛り上がることは盛り上がるねえ。結構破損してたりするのはおいといて。

で、ルーブル美術館へ突入。なんか機関銃持った軍隊が3人くらい歩いていたり、犬を連れて散歩している爺さんがいたり、のどかなんだか恐ろしいんだかよくわからん。機関銃とか、日本じゃまずみないもんね。もしここで突然おいらが奇声を上げてなんか変なビンでも片手に走り出したら蜂の巣になることもできるのだと思うと、それはそれで不思議。まあたぶんその前に取り押さえられて首をグイッと掴まれてなんか訳のわからん言葉で怒られるのがオチなんだろうけど。

それにしてもまあでかいこと。ルーブルの中庭に県立美術館の建物を丸めたら全部入ってしまうんじゃないのというぐらいにでかい。ここにあちこちからかき集めた美術品があんのか。でもそのわりになんかセキュリティ甘いよーな気も。窓ガラスいっぱいあるし、パリンと割ったら彫刻一個くらい取れるんじゃないかと。
日本で美術館というと、まず窓がない。自然光で見せる美術館が異常に少ない。品川の原美術館や丸亀の猪熊ぐらいしか、でっかいところでは自然光を見たことがないような気がする。それゆえ、このあけっぴろげ感はなんか不思議だ。


で、簡単なセキュリティチェックを済ませて、いよいよ館内へ。朝一番だというのにもー結構たくさんのヒトがウロウロしていて、この段階で少しめんどい。が、そんなこと言ってたら怒られちゃうので、何カ国版あんのよっていうくらいたくさんの言語が揃えられたマップの中から日本語版を探しだして、まずはほぼ一目散にミロのヴィーナスへ。

いやー、しかしやっぱりきれいね。写真撮ってもまるでどっかの素材集のようにキレイに撮れます。自然光だから、ますますきれいに見えます。ついつい鉛筆と画板を持ってデッサンしたくなるような感じです。
てか、美術館内写真OK、っていうのもうれしい。日本だとカメラ持ってるだけで係員が付いて来たりすることあるもんねえ(一回震災で崩壊する前の兵庫県立美術館で誰かがフラッシュをたいて、まるで犯人のようにおこられたトラウマがある)。

美術館は静寂であるもの。厳かであるもの。

おいらが美術館に長期滞在しないのは、そういうルールが原因なのかも知れない。そういえば、大学の卒業制作は美術館を遊園地化する「amuseum」というタイトルの作品だった。原則撮影OKで遊べて触れる作品ばかりを揃えた美術館と、映像や演劇、映画など様々なアート活動のための制作・公開の仕組みを揃えた超バブリーなミュージアムという計画で、敷地はかるぽーとから土佐橋までの西側一帯。建物にも一切平行なところがなく、ほとんどの建物を地中に埋めて上は公園にしちゃうという希有壮大なスケールだったのだが、当然それは全く実現することなく15年の月日が流れてしまっている。


ルーブルには、もう一個見たいのがあった。その名も、サモトラケのニケ。これは美大受験をしたヒトなら誰でも知ってるであろう、一番でっかい石膏像になってる像。なんかまたこの像が階段を上がったところにあって、見せ方が超憎い。そこに高い天窓から自然光が降りて来て神々しいったらありゃしない。
その前後にも様々な像がいろいろ。東京の予備校で一年間みっちり描き続けた石膏像の原型もあちこちにいて、なんか久しぶりの再会のような懐かしい気持ちにもなる。中には、お前は滝川クリステルかみたいなかわいいきれいな像もあったりして。


で、信じれないくらい早くルーブルを退出し、小さな凱旋門の近くのPAULというパン屋さんでいくつかパンをゲットしてお昼にする。こういう小さなお店のレジはだいたいが黒人さんが多いんだけど、昨日や一昨日のスーパーでもまごついてるとちょっとムッとした顔を正直に見せてくれるので泣きたくなる。特にここの店員さんはかなりイラレで、最終的には後ろにいたフランス人の子(たぶん中学生???)にフランス語を英訳してもらってなんとかクロワッサンやタルトを購入した。で、すぐ近くのベンチでメシ。

基本的にパリの鳩はふてぶてしい。なんか太ってるし、とにかく数が多いこと夥しい。そのことは、昨日のチャリでも十分に分かっていた。
だけど、雀までふてぶてしいとは知らなかった。そして、もはや手乗りしてきそうなくらい近くに寄って来る雀も初めて見た。パンを食べてると、次から次へと寄って来る。ひどい奴になると地面に落ちたパンとかじゃなく、手に持ってるパン本体に狙いを定めて飛びかかって来る奴までいる。そして、振り払ってものかない。最後は机の上に雀が10羽近く、机の下に鳩が30羽近く集合して大変なことになった。

気を取り直して、また歩く。のだめが孫ルイに付き合わされたとき、ボートが流れてパンツ丸見せで池ポチャしたチュイルリー公園。フランス式の公園つか庭園てやつで、超グリッドな感じで木々が並ぶ。木々の間の通路を歩けば、めまぐるしく、だけど整然と風景が流れる。手入れも行き届いていて、ゆったりと歩けるのがうれしい。

街のど真ん中にこういう舗装もされていないでっかい森があると、自然とヒトは集まってくる。高知城や丸の内緑地、そして当然中央公園が高知ではこのかわりになっていて、夕方になると結構たくさんのヒトが歩いているけど、もう少しランドスケープの観点から緑地の整理や休憩ポイントの整備、サインの整備を行なえば(なんでもかんでも龍馬のロゴつけたりせずに)、長い目でみてもっと愛される場所になるなあと常々思うんだけど、残念ながらそういう感じにはいまのところなっていない。
そして、公園から南へいくと、オルセーにつながるレオポール・セダール・サンゴール橋へ至る。ここはかつて90年代に京都市長が先斗町と祇園を結ぶ橋を架けたいとか言いだして、その見本にした橋だった(と思う)。で、猛烈な大反対を受けて頓挫。いくらパリ市と姉妹都市だからといって、パリのシンボル的な橋を京都のどまんなかにもってくんのはどーかしてる。当時は京都ホテルや京都駅の建て替えで景観論争たけなわの時代で、この論争の中で唯一立ち上がることのなかったプロジェクトだ。
まあでもやっぱりつくらなくて良かったかも。床材は全部たぶんイペという木材を使っているんだけど、それが鉄骨に置かれているだけでなんか怖い。日本、それも京都のようなところだったら数年で全部腐ってしまいそうだ。作るはいいでも管理が面倒。そんな橋におそらくなっていたに違いない。

で、この橋のたもとでは、老人がトランペットを吹いていた。絵になる。

で、この橋のたもとの河畔では、老人が犬を散歩させていた。絵になる。

いちいち絵になる。外人だからかね?

オルセー。ここは出発前に誰もかれもからお薦めされた、曰く「日本人好きする美術館」。確かに入ってる作家もセザンヌにゴッホ、ゴーギャンにミレーなどなど、日本の美術教科書に出て来る西洋画家のオンパレードだ。サイズも手頃だし、込み具合もルーブルより少しましかも知れない。


が、やっぱり教科書でさんざんみた画家の本物を見ても、スイマセン、別にあまり感動せんのですよ・・・まあこんだけの名画をホントに触れる距離でみれるというのは超シアワセなはずなんだけど、なんだけど、なんだけど・・・結局、ココで一番漉きだったのはCuno Amiet とかいう画家の絵。原研哉の無印良品シリーズとも相通ずる構図で、なんか惹かれる。色も好き。


再びオルセーを信じられないくらい早い時間で退出して、出てすぐのタバコ屋で飲み物をゲット。ここの冷蔵庫、木造でかわいい。おじさんは無愛想だけど。
しばし休憩(この段階で2人とも足がかなり厳しいことになってる)してから、RERでChamp de Mars Tour Eiffel駅へ移動。メトロと違い、2階建ての列車で、車幅も広い。こちら側のRERは、北に向かうRERと違って高級住宅地方面行きだからか、なんか乗ってても安心感があるのは気のせいか。

駅を上がると、日仏会館みたいのがあってそこにちょっと立ち寄ってみる。結構厳しいセキュリティチェックがあるけど、黒人の警備員がなんか優しくてニコニコしてるので安心。

で、たったそれだけの笑顔でホクホクしつつ、エッフェル塔へ向かっていると、向こうから中近東系の身なりをした女性がなんかほにゃほにゃ言いながら近づいて来る。で、この英文を読めと。
読んでみると、なんかどっかのアフリカの国かなんかで難民がいるのでそれを助けるために募金せいみたいなことが書いてあって、募金してくれ募金してくれ募金してくれ募金してくれ募金してくれ募金してくれ募金してくれと手を差し出して来る。
ここで気弱で優しいおいらはついつい1ユーロ渡してしまう。奥様はこういう行為に対してきちんと怪しむので「やめちょきや、こんなくでこんなヒト、おかしいやろ」とか言ってるけど、優しいおいらは「まあ1ユーロくらい・・・それににげれんやろ、めんどいし」とかいうて渡してしまう。
だけどやっぱりおかしいわいなあとか思いつつ、エッフェル塔の下あたりまでくると、似たようなのがゴロゴロ。途端に腹が立つ。1ユーロ返せ。
この旅では、この後もポンピドゥーのあたりでも引っかかりかけ、ICE
で北駅を出る直前でも列車内で引っかかりかけそうになるなど、なぜかおいらばかりが標的にされ続け、ひっかかり続けた。モンマルトルのミサンガ売りは見事な身のこなしでミサンガ装着を免れたけど、パリ初心者はホニャホニャ女に要注意だ。

で、エッフェル塔は登ろうかと思いある列にならんでみたんだけど、窓口で聞いてみるとこれは徒歩で登る人向けの窓口だとゆー。で、エレベーターで行くならあっちじゃと言うからそっちをみたら、まあビッグサンダーマウンテン並みの大行列。当然2秒で諦めて、対岸の広場へと向かった。
しばし雨。対岸の広場は、のだめ実写版で上野樹里がヤキグリ食べてたりする名シーンの場所。でもやっぱテレビと実際の印象って、なんか結構違うんですな・・・

まあそれにしてもなんとまあでかい塔なんでしょうか。
こんなんを100年以上前に作ったってのはスゴいですな。基礎とか見てたらなんか石積みっぽかったりするから耐震性とかどうなんよという感じだけど、それが決して変に色あせることなく今にあるってのがすごい。

さて、ここから再びOPERAへ。天蓋がものすごいことになってるデパートGALERIES LAGAYETへ。これデパートすかとツッコミが必ず必要な美しさ。
まあパリのデパートはあちこち天蓋があるんだけど、わしら程度の身分つか経済力ならここがオススメ。だけどこの天蓋をゆっくりと見渡せるような場所はほとんど皆無なので要注意だ。ここの文具コーナーでは、イロイロ資材を買い込む。日本と違い、商品の管理もなんか甘くて、パッケージが結構ビリビリ行ってたりするのが多い。

で、表に出ると目の前にユニクロが。オペラの真ん前にユニクロ。なんかやっちゃいけねえことやってる感じだけど、これがまた凄まじいヒトだかりで、次から次へと人が吸い込まれて行く。
で、
ユニ
クロ

の新しいロゴ、なんかおいらは余り好きじゃなかったんだけど、こうしてパリで見るととっても目立つ。ものすごく記号的で異国的で、なんかアトムのよーな科学的な感じまでしてくる。店内に入ってみると「JAPAN TECHNOLOGY FROM JAPAN TOKYO」などと書いてある電飾があちこちに走っていて、パリの街中で超猛烈な違和感を放ってなんか変なワクワク感を催させる。ちなみにレジは30分待ちか1時間待ちか、というぐらいの長蛇で、ヒートテックを買っておこうかと思ったけどこれまた2秒で諦めた。

んで、ユニクロから少し歩いたところにある雑貨屋さんペリゴへ。ここは生活雑貨がイロイロ揃ったお店で、奥様が行ってみたいという。
入ってみると、すぐに一人の店員さんがニコニコしながら近づいて来る。「Japonais?」
んだ、と応えると、これまたかわいい笑顔でニホンダイスキと。んで、自分の眉をさして「MAYU」としゃべりだす。う~ん、かわいい。
この子、お客さんで日本の人がきたら、ちょっとずつ日本語を教えてもらっているらしくて、うちらはTSUMEとかFUKURAHAGIとか、ちょっとマニアックなところを20分くらいにわたって教えてみる。そして、数字とかも14くらいまでサラーと言えたりして、まあとにかくすごい。
そしてその一方、フランス語はおろか英語すら超カタコトな我々は何をしているのだろうかとちょっと残念な気持ちになる。そう、せめて英語くらいもう少し勉強しておけば良かった。たぶん、もっともっとお話できるのに。

再びOPERAの正面へ。まあここがやっぱり一番パリっぽいですな。車がめちゃくちゃになって走っているのってアジアの風景だと思ってたけど、パリも凄まじい。あちこちでクラクション鳴りまくりで、あちこちでなんでぶつからんの?という距離ですれ違う。どの車も別にピカピカに磨かれてたりなんかしなくて、むしろボロボロ。傷の付いたベンツなんて初めて見ましたよ。

そして夜。ホテルで一服の後、ポンピドゥーセンターへ。ミュージアム系ではここが一番行きたかったところで、大学時代以来の夢ひとつよーやく叶ったりだ。

んで、建物の外に付いたチューブエスカレータを登って行くと、エッフェル塔が遠く向こうに見える。街全体が黄色い光で、これはもうなんだかとっても暖かい。東京の夜空は白いけど、ここは赤い。街の景観って言う意味じゃ、やっぱりこれはパリに圧倒的軍配があがるねえ。ひとこと、きれいだもん。

ちなみに写真を拡大したらわかるけど、この時のエッフェル塔はただのライトアップじゃなくて塔全体がキラキラ光っていた。毎正時になると5分だけこうなるらしいんだけど、間近でみたらどんな感じなんだろうか。そら遊びすぎだろーっていう感じがしますけんど。

ポンピドゥーの中は、デュシャンをはじめもーそれはそれは現代美術の見本市。展示室の配置も面白くて、次の部屋はなにがあるの?と期待をさせてくれる。なんか小さいギャラリーが連なっているような感じといった方がいいかも知れない。