1日目に戻る

まだ夜明け前の6時過ぎ、目が覚める。日が出るのは8時前だから、まだまだ暗い。しかし朝は朝。向かいのアパルトマンではおばさんがボーッと外を見ながらタバコを一服していたり、なんかよくわからん店が早くもシャッターを開けていたり。

というわけで、9時前には宿を出発。今日はレンタサイクルを借りて一日じゅうパリを走り回って土地勘を得る。メトロやバスでいきなり右も左も分からずに動くよりも、体で覚えた方がよっぽど早い。ましてや、パリ滞在はわずかに4日。ふだんの旅よりもさらに効率的に、さらに幅広く、さらにねっとりと動き回りたい。

世界に冠たる観光都市でもあるパリでは、2007年から市がレンタサイクルVélibを運営している。市内1500カ所以上にサイクルポートを設置し、2万台以上のチャリンコを24時間いつでも借りることができる恐るべしサービスだ。しかもこのVelibのスタートにあわせて自転車専用レーンの整備やセーヌ河岸道路の日曜日開放など、交通政策全体も改めているから、なかなかスピード感がある。

日本でこういうことをしようと思ったら、多分国交省に県警、県庁、市役所がそれぞれいろんなことを言いだして、絶対に前に進まない。いちど高知でベロタクシーができないかどうか思って問い合わせてみたときも、条例が云々とか、県警が許さない可能性高しとかで、3分で面倒になって諦めた。ましてや高知だと「公共交通政策」が皆無なので、やろうと思ったら100年はかかるだろう。利便性の最低条件でもあるバス路線のナンバリング程度でもできないわけですからねえ。

でも、帯屋街の東と西にこういうサイクルポートがあったら、結構便利だろうねえ。観光客にとってももちろんだけど、車やバス、電車とかで街まで出て、東から西へ買い物に歩く。またそのまま帰って来るのは面倒だから、チャリで戻ると。そのチャリは鏡川大橋の下に置いてるチャリとかを使って、サイクルポートの管理は高知女子大のエスコーターズに委託。それで片方のポートが空になったら移してもらうとかしたら、それはそれで面白い。

まあパリでやってるからといってVelibを日本でやる必要はないわけだけど、単純にこういう政策は分かりやすいので感心する。

高知でもエスコーターズVelibみたいなことをうまく電車やバス繋げば、その利用率アップにもつながるんではないか???(パークアンドライドは車⇆電車だけじゃない)。

が、このVelib、ICチップ付きのクレジットカードじゃないと借りれないのが残念なところ。うちらは一枚もそんな最先端カードを持ってないので、あえなく断念して市役所の近くのレンタサイクル屋「BIKE ABOUT TOURS」からチャリを借りることにした。
バイクレンタル料は一日15ユーロ。だいたい2000円ですな。ただちょっとビックリしたのがパスポートとの引き換えだったこと。超陽気なスタッフに「This cycle is my life,passport is your life」みたいな感じで言われて、ついついフツーに信用して渡してしまったが、あとで奥さんに「気軽に渡すような代物ではない」と小言されるハメになる。まあここのレンタサイクルのお客さんはみんなそうしてるんだろうから問題はないんだろうけど、そういうのが気にならない人でVelibを使えない人にはこのお店、オススメです。

されどやっぱりチャリは気持ちがいい。右側通行で路面を走らないといかんのも「慣れないと危険」とか聞いてたけど、あちこちに当然チャリ走らせている人がいるのでそれほど怖くない。でもホントにスレスレで車が走って行くときがあるので、事故になった大変そうだ。
さて、今回のチャリは「パリを知る」がテーマ。まずはマレ地区のピカソ美術館へ。ここはmietteの奈々ちゃん他多くの友達がオススメしてくれたミュージアム。
・・・が、館の前まで到達すると固く閉ざされた門の前に、なんだか小さな人だかり。まさか・・・と思っていると、2012年くらいまで改装工事で閉館なんだと。。。ただでさえパスポート預ける事件で凹み気味のところにさらに一押しだ。
上の写真は二人の会話もなく西へと進む路地で撮った写真。

まあでも気にしていてもしゃーないので、なくなったら大使館に駆け込むことにして、サイクリングを続行。途中なぜか「愛」の字の刻まれた歩行者ボタンがあったり、ちょいとした商店街があったりしてるうちに回復し、とにかくペダルを漕ぎ続ける。やがていつの間にかオペラに着き、サントトリニテ教会を経てマドレーヌ、コンコルド広場へ。全く前知識なしで来た街なので、地図はいつでも出せるように右にも左にも突っ込んで、学習学習。

そこからさらにセーヌを渡り、河畔をしばらく走ってオルセーの裏道へ。ここらへんもなんか清水坂のような「I♥PARIS」みたいなTシャツ屋があったり、超洒落た本屋さんがあったり、大学や寺院があったりと面白いスポットが点在している。

んで、ここらへんでやっとお昼だ。再びマレに戻って、パッと入れそうな店に入ると中国人の店。エビチリとか餃子とか適当に選んで食べるがなかなかウマい。ちなみに注文は「This! one!」でなんとかなる(なんとかしてくれる)。
んで、店先の公園で一服していると、老人がこっちに近寄って来る。どーもそこらへんで拾ったタバコに火をくれという感じ。火をつけたげると、そのあとも振り返ってはニコニコしながら去っていった。
ここらへんから、ようやく少しずつフランス語慣れしてくる。とりあえずBonjourとMerci、Pardonを使えばなんとかなるということ。とりあえず片言の英語でもなんとかなるということ。そして、Japonais?と聞かれたらウィと応えること。そしたらパリ人たちは日本人慣れしてるから「コンニチワ」とか「モシモシ」とかいうてくれること。
まあそれでもコミュニケーションが見事成立してるわけではないのでいかんけど、とりあえず昨日着いた空港での両替失敗、空港からホテルまでのタクシーでの見事な静寂と緊張、そんな失敗はもうしない。
マレでは、ところどころにある雑貨屋さんやオリジナルのファイルや文具をいろいろ置いてるPapier+
、その向かいの小さな文具店Melodies Graphiquesなどをウロウロ。Melody…では一時店内が日本人だらけになってしまい、変な空気に。んで、買い物をする日本人カップルを見ていると、お勘定をしてありがとうというべきところで「Bonjour」と間違え、すぐに「あ!」と気づくも「Merci」と応えて訳のわからんことになっていた(その後の2日間で自分も何度もコレを連発。身に付いていない言葉はこれだから困る)。
ちなみにこの日に走った経路は青のライン。そこそこ走って4時にチャリを返却。一回ホテルに戻って夜にはメトロに挑戦である。

ちなみにこの日に走った経路は青のライン。そこそこ走って4時にチャリを返却。一回ホテルに戻って夜にはメトロに挑戦である。メトロにしてもバスにしても、ヨーロッパの仕組みは日本に比べてなんかおおらかだ。区間毎の料金制ではなくゾーン毎の料金制でわかりやすい。改札もオール自動改札で、出口駅でも自動改札は通るけど回収はない。不正しようと思ったらなんとでもなりそうな仕組みだ。
が、そんなメトロに乗る前に障壁がひとつ。変な棒をコロコロ転がして選択する自販機になんか慣れなくて10分ばかり悪戦苦闘、買いたいのは10枚つづりの回数券であるCarnet(カルネ)なんだけど、どこをどうやればそうなるのかがいまいちつかみにくい。しかも空港のロワッシーと同じで小銭しか使えんし! まあそれでもやっぱりどうにかなるんですな。ある瞬間にああこれかい!と理解できたら話は早い、あっさりと買えました。
んで、自動改札を通過する客の様子を観察したうえで、いよいよメトロ突入。1900年頃にほぼ全線が開通したというだけあって、とにかく何もかもレトロだ。天井も低く、照明も決して明るくはない。車両も小振りで長堀鶴見緑地線のようなサイズだ。
そして決定的に日本と違うのは、駅名板に次駅表示が無く、コンコースのサインにも路線番号と終着駅しか表示されていないということだ。つまり、高知駅に行っても「1番線高松/2番線窪川」としか書いてないようなもので、途中の後免に行きたくてもそれが高松方面だということを知らないと辿り着けないわけだ。

んで、行き先はオペラ駅。とりあえず今日昼も行ってるし、夜のオペラも見ておきたい。ただそれだけ。
でも、オペラに着いたら欲が出る。エッフェル塔や特に行く予定にしていない凱旋門もちょっとは見ておこうということでコンコルド駅へ向かい、そこからシャンゼリゼ通りをとことこと歩く。
だけど、シャンゼリゼ通りって全線なんかスゴいブランド通りなんかと思ったら、東半分は公園の中を通る道なんですな。そんなことも調べずに降りたので、果てしなく長い公園の中を抜ける道をひたすら凱旋門に向かって歩くハメに。ほいたら途中雑誌ELLEの歴代表紙を道沿いに並べたところもあったりして(いいネタのタネもあったのでここでは写真出さない)、20分くらいでなんかそれらしい区域に到着。
もうクタクタ。さらにここで奥様が足を挫いたので、メトロで至急ホテルへと戻って今日の旅路はおしまいおしまい、である。
タケムラ家家訓「旅はボロボロ」 指数 70