





「ありがとう」の洪水が観る者に押し寄せる。
どこか[死]のイメージを感じさせる作品を作り続ける現代美術作家・塩田千春の最新作《ありがとうの手紙》は、いつもとは真逆の[生]を深く感じさせる作品だ。
今回の展覧会のために集められた、3000人の「ありがとう」の気持ちがしたためられた手紙は、無数の黒い紐で結びつけられ、絡み合い、まるで渦を巻くように床から天井にまで広がってゆく。
手紙に込められた思いは人それぞれ。感謝、謝罪、愛情・・・同じ「ありがとう」という言葉がそこにありながら、そこにある「ありがとう」の理由は限りなく多様であり、作品を観るうちにそのことを「理解した」瞬間、観る者は心の奥をざわつかせることになる。
「ありがとう」という言葉は、日々生きることそのもの。2400の「ありがとう」は、2400の「生」そのものなのだ。それぞれの「生」はしがらみあい、からみあい、ほどけない。そして、遠く離されることもあれば、孤独にさらされることも、共に渦を巻くこともある。
(ウエブマガジン四国大陸より)
2013年に高知県立美術館で開催された同名の展覧会のドキュメント。
2013
- Client
- 高知県立美術館
- Photographer
- 河上展儀
- Designer
- タケムラナオヤ