というわけでまたもや小旅。今回は、実に4年ぶりの東京。以前行った時は、中野を足がかりに、西荻窪、立川〜国立、月島、谷中あたりをウロウロしまくった。今回は全く事前予定を立てていないのだが、さてどうなることやら。

今回は、飛行機のようにビジネスライクでなくて、夜行バスのように狭苦しくない、夜行特急の「サンライズ瀬戸」での東京入りだ。自由席はガラガラというしまんと号で高知から坂出まで走った後(後ろに付いている岡山行きはまだ乗っていたけど)、乗り換え。
約15分遅れで入ってきたサンライズ、さすがにきれい。昔東京にいた頃、長い休みの度に島根に帰るために乗っていた「出雲」のイメージがいまだに寝台にはあるけど、もう全くイメージが違う。
全体的に木目調のインテリアで、扉は全てタッチセンサー式の自動ドア。おいらが乗ったのは「ノビノビ座席」という指定席特急料金だけで乗れるいわば「お座敷」車両で、ほぼ満席。というか満ベッド。
横になるとちょうど上半身ぐらいの部分までは袖壁が出てきていて、意外と隣を気にすることなく爆睡できる。高速バス+4000円で乗れるんだから、財布に余裕があるなら次の東京はこれで決まりである。
とはいえ、やっぱり少しは揺れる。車内でMacを出して書類を書いていても、結構揺れるので少し酔う。なにより酎ハイを呑んでいるからだろうか?

まあそんなこんなしているうちに寝てしまい、いつの間にか朝。定刻より少し遅れて東京駅に滑り込む。実は今回、前日になっていきなりR氏も東京へ行くことになり、氏は高速バスで東京入りしているのだ。というわけでまずは新宿へ。

新宿駅。日曜日の朝7時過ぎだというのに、なんでこんなに人がいるんだ? なんぼいうても気持ち悪い。都会人は朝が早いのかも知れないし、呑みあけの人もいるんだろうけど、大阪時代に心斎橋で飲み明かして道頓堀をウロウロしていた時でもこんなに人はいない。
んで、新宿駅西口にてR氏と合流。まずは朝食ということで、お手軽にマクドへ。早速満員。満員とか渋滞とか行列というのがおいらは大嫌いなので、なんか妙にモヤモヤする。後ろには外人さんとデイト中と思しき女子学生風、その向こうにはマチ子巻きの素敵なオババ、隣にはなんか本を声に出して読むオジィ。窓の外には電線に止まるカラスが四匹、そのさらに向こうに朝からたくさんの客を乗せて走るJR、その向こうには東口のネオン街の看板たち。
あまりの雑多感になんだか疲れていく自分がわかる。先日大阪へ行った時もそうだったけど、人混みはやはりあまり好きじゃない。おいらは一応東京育ちの人間なのだけど、もうたぶんこの街には住めないなあ、少なくとも今は。などと思う。

んで、池袋へまず荷物を置きにいく。夜のポポタムでのトーク用に一応PCも持ってきていたりするので、とにかく身軽にして動きたいのだ。
そこから山手線で秋葉原、総武線で両国へ。なんでこんなところかというと「江戸東京博物館」をみるためだ。R氏にとってはサインの勉強にもなるし、おいらにとっては単純に江戸史の勉強にもなる。なんでも勉強勉強。
ホントは一時間くらいで出てくるはずだった。だけどかなり展示が面白くて、しかも写真撮り放題ということもあってついついのんびりとしてしまう。圧巻だったのは江戸の模型と、東京近代史の家具や家の展示。これはおもろい。椅子の歴史の中に、コクヨのパイプ椅子みたいのも置いてあったりして笑えるし。

お次は三軒茶屋の「世田谷ものづくり学校」へ。ここは最近『赤ぱっち』の上映を行ったところで、以前の記事でも書いた「CAP」や「京都芸術センター」の東京版といったところ。三軒茶屋からも池尻大橋からも徒歩15分程度と微妙に遠く、それが少ししんどい。案内もあまりない。東京は広いので、こういう時に正直しんどい。

ここは最近休校になった池尻中学校の校舎をそのまま転用したもので、教室がたとえばギャラリーやカフェ、作家のアトリエ、デザイナーの事務所、会議室、上映室といったものに転用されている。京都芸術センターに比べると校舎はつまらないつくりけどそれぞれの室は少し開放的で、中も少しだけ見えるようになっている。また、ブラジル移民の待機施設だったというCAPに比べると建物は同じく迫力不足だけど活気がある。ほとんどのオフィスは日曜日だからかクローズされていたけど、カフェとなんか変なフラワーアレンジメント教室みたいのは開かれていた。夏をテーマにしたものらしいんだけど、草となんかよく分からない果物や野菜の見本をそれに刺したりして。なんかいまいちわからない。カフェは、テイクアウト方式で、禁煙。おいら的には禁煙じゃない方がいいと思うんだけど。要は、おいらが今回行った時に開催されていたものは、ちょっといまひとつ。むしろ、今回開いていなかったところに興味津々のものは多くあった。

まあそれはいいとして、高知でもこういうことをしたい。ただ、高知だと少し役者不足の部分も否めない。東京は今回の旅を通しても思ったんだけど、作家さんの完成度は高いけど、いまいち面白くない。冒険もないし、安全牌ばかりを選んでいるような感じ。神戸や京都は、完成度はまちまちだけど、そこそこ面白い。楽しんで作っているというか。高知は、完成度はまだまだという感じの作家が多いけど、面白い作家が多いのもまた事実(ちなみに若手に限っての話です。この比較は)。
たとえば東京のように無闇に情報の坩堝と化しているわけではないから、つまりはアートに関わる情報が少ないゆえ、その情報に左右されていない。だけど、情報に左右されないあまり、完成度を高めるための情報を得ることも難しい。よって、あともう一歩という作品もなんだか多い。どっちがいいのかといえば、おいらは本来は高知と東京の中間みたいなところが理想的なんだろうなと思ったりもする。左右されていないところと左右されるべきところとをバランスよく、というか。。。まあこの話は今すぐまとまることではないのでまた今度。
あと、こういうスペースは、高知だったら、たとえば赤岡のような街でアーティストインレジデンス的に展開することなんかも考えられそう。こんなことをR氏と話ながら、再び渋谷方面へ逆戻り。
次は池袋のポポタムへ。今回の、当然ながら最大の目的である「高知遺産〜いきなり、東京展」のスライドトークへの出席のためだ。なんか、高知遺産を出して以来、多少予想はしていたもののこうして人前で喋る機会が増えてきている。
先日はおいらがどうしても好きになれないNPO高知市民会議でのまちづくりトークカフェでお話をした。このときは、どうも高知遺産の表層論〜懐かしいとかそういう類〜で終わってしまい、とってもひどい消化不良を起こした。
今回は、もう少し高知遺産の裏側に込めた行政批判の部分や、「開発欲」をもつ上の世代のことなんかも話したいものだけどどうなることやら。。。話の流れの中で言わないと、なんか押しつけくさくなるような気がするし、ましてや立場や世代の違う人々にまとめて話しかけるとなると、やっぱりこういうコアな部分というのは説明がしにくい。おいらが単に緊張師の話し下手というのもあるけど。まあそれはいいとして、この先も高松、大阪、高知の某大学、中村の商店主の会などでチョコチョコこういう話をしていかなければいけない模様。遺産の他のメンバーにももっと来て欲しいんだけど・・・

まあ何はともあれポポタムへ。池袋駅で少し迷いながら、なんとか目白方面へ向けて足を進める。東京って、たとえば池袋や渋谷のような大ターミナルでも、一歩離れたら閑静な住宅街で、細い路地が縦横に走っているのが印象的だ。そしてとてもフォトジェニック。東京で好きなところをあげるとしたら、こういう細路地なんかもしれない。
そんな細路地を10分も歩くと、ポポタムの沢田さんと、今回の高知遺産展でいろいろ高知・東京の橋渡し役を務めてくれた旧5号に遭遇。ポポタムの沢田さんは、以前雑誌harappaの取材で沢田マンションに来て以来。てゆか、harappaを作っているメンバーがつくったお店がポポタムなのだ。
ポポタムは、それほど広い店ではないけれど、手前のコーナーに絵本やTシャツなどが並んでいた。その真ん中には、高知遺産や絵金蔵図録、赤岡町の「犬も歩けば赤岡町」、セブンデイズホテルの「ROOM」などの高知本が並び、奥のギャラリーには去年graffitiで展示した写真たちがずらっと並んでいた。Graffitiで3回並べたもののうち半分を、graffitiよりも少し狭いギャラリーで展示しているんだから、かなり密度が濃い感じ。そして正面には第4次展のスライドが。
 なんだか、ここは池袋だというのに、高知でやった仕事が流れているというのはとても不思議だ。そして、やはり嬉しいもんだ。ありがとうですポポタムさん。
開場は6時半。それまで打ち合わせということで近所のカフェへ。ここでビールを飲みながら、第4次展のスライドをおいらと5号で解説しながら、ところどころ遺産のコンセプトとか高知と東京の話を折り込むことにする。
しかしお客はくるんだろうか。そんな不安を胸に。
まあでもそこは東京。ポポタムさんや5号の精力的な営業の甲斐あってか、いざ蓋を開けてみると30人近い人が店内にすし詰めになった。中には先週赤岡時間を過ごした早稲田1/2の姿も。また、後半には元グラフィティのちぃ氏も来場。さらに、タウン情報こうちにいたスタッフの人たちも何人か最前列に。おーおーまるでここは高知ですか、という感じも少しだけ。
んで、おいらも少しだけ緊張していたので、あと舌廻りをよくするためにと酎ハイをグビグビと。したらなんか疲れていたのでしょう、酔ってしまって少し朦朧としてくる。
そこでいきなりスタート。開場の30人のうち4割くらいは高知出身や、高知にいたことのある人。それでも半分は高知じゃないんだね〜。なんかソレも面白いな。高知人ばかりかなと思っていたんだけど。。。まあ始まってみると結構普通に喋れるもので、スライドを流しながら高知遺産の生まれたきっかけでもある「比島」の今を説明したりしてみる。10年以上遅れてやってきた開発の波の中で、ほかの街なら見直されつつあるものがどんどん破壊されていくという現状についてとか。あとはできるだけ笑いを取ることを、いつのまにか狙っていたような気がする。そんなこんなで、気が付けば一時間半以上は喋っていたようだ。5号の合いの手や、赤岡の写真でのR氏の合いの手も非常に助かる、やりやすい。やっぱり一人じゃようしゃべらんよ。

スライドでは、結構赤岡の写真も多く出てきた(銭湯跡など)。高知だって全部が「遺産」として将来を憂えてしまうようなものばかりじゃない。赤岡のように、遺産を活かしてなにかしていこうとする街もある、ということで、赤岡町と蔵の説明、これが売れたら銭湯が復活できるという「犬も歩けば・・・」の説明をR氏からしていただく。なにはともあれ宣伝宣伝。写真はその話を聞いているお客さんたちの顔。なんでかみんな、嬉しそうな顔をしてる。
それにしても、蔵や赤岡は県内よりもむしろ県外の方が反応がいいような気がするのはなんでだろうか。会場にも、先日の絵金祭りに行ったという人は多かった。でも、意外とそれしか知られていないので、せいぜい一年に一回しか注目されない。そう考えると、蔵はもっともっと蔵やまち全体を使っての情報発信や発信できるネタづくりをソフトの部分から積極的に重ねていくことがとても大切なような気がする。また、絵金文化の継承をする博物館としての使命の全うも。
なにはともあれ、喋り倒して外で一服。帰り間際のお客さんたちとちょこちょこお話。ちぃ氏はたぶん2年ぶりくらいにお会いしたのだが、なんだか高知時代に比べると少し丸くなった感じ、人柄が。いやもともと丸かったけど、当時は職場でよく怒っている姿を見ていたもので。また、とあるNPOで活躍している方ともお知り合いに。この方は、今高知のとある大学と組んで動こうとしているんだけど、この大学が「東京志向」が異常に強くてちょっと辟易気味なのだとか。なんで地元に目を向けることが出来ないのか不思議ねーという話のなかで・・・また来月高知に行くから何かやってきましょうとのご提案をいただいた。もちろんやります。うちらはベタベタ高知の視点でやってきます。
この話で思ったのは、東京志向も結構だけど、田舎でなんぼ東京を志向したところで、それが東京からすればどう見えるのかなんて、逆に見えないんだろうなということ。たぶん、それってかっこわるいし、田舎臭い。田舎にいるなら田舎に立脚して東京を眺めないと、結局いろいろなことを見失う。たとえば梅原さんのデザインや馬路村の商品群、日曜市や最近よく紹介される高知の店々とか、「高知から出ているもので全国から評価されているもの」って、だいたいきちんと田舎に立脚してる。本来、このことってきっと当たり前のことなんですけどね。

なにはともあれ、ポポタムの講演終了。次は8月7日に沢マンをテーマにトークがあるらしい。おいらは2回も東京には行けないので、行かないけど。
その後打ち上げ。目白の飲み屋さんで梅酒をチビチビ。サンマの旨さに驚いた。強火でジュージュー炎を立てながら焼いていたんだけど、まさかこんなにうまいとは。