思い立ったら旅に出る。
きっかけはとても単純、関西で11年ぶりの大雪というニュースなのだ。

11年前といえば京都に住みながら大阪の設計事務所で働いていたころ。五条の家で目覚めると鴨川も東山も真っ白で、普段なら一時間もかからない淀屋橋までの通勤路が2時間以上。心斎橋の事務所あたりもまさに雪景色で、いつもならビュンビュンと車が走る御堂筋も、この日ばかりはノロノロ運転だったのだ。
が、このときはいずこの寺も巡ることはできなかった。せっかくの雪の都、それを見逃す手は無いはずなのに、電車が動いている以上何とかいかねばクビになる。で、ニュースを聞いていたらどうにも体が止まらない。今から出たところで間に合うものかも分からないけど、京の都の雪の景、ぜひにぜひに見てみたいではないか。
いでたちは午前1時半。あさっての秋葉祭りや城下さんの主演するミュージカルの観劇も捨てがたいが、一旦「京都いきてえ」に火がつくともう止められない。京都って、そういうものなのだ。だから、短ければ半年、長くても1−2年に一度は必ず京都詣でに出かけてしまう。たぶん、これは東京にはない衝動だ。
とはいえ、行ったところで案外普通に過ごしてしまうのもまた京都なのだ。あの店も行きたい、この庭も行きたい、この人にも会いたい。だけどいっつもまあ今度のお楽しみ、といろいろ楽しみを置いてきてしまう。だからいつも何だか後ろ髪を引かれるままに、旅路を終えてしまうのだ。
今回も、そうなる気配は濃厚だ。なんせ出発が午前様。TACOで出版した「はんこ本。」の行商も兼ねてのことにしたから、大阪や神戸も覗きたい。京都に滞在できるのはせいぜい日中程度、のことでしかない。
出発が1時半だと、さすがに車の姿もほとんど見えない。高知道から松山道を抜けて、いつものように瀬戸大橋から何度走ってもつまらない山陽道へと入るが、たまにトラックやバスがいるくらいで、動いている自家用車の数はほんのまばらだ。そして、眠気がやってきたのが3時半、兵庫の手前の瀬戸で車中泊と相成った。
おいらは車中泊が好きだ。一時期伊豆やら飛騨やら金沢やら九州やら・・・と車で駆けめぐった頃も、車中には毛布や枕なんかを備えつけていたことがあった。決して熟睡できるもんじゃあないけれど、着実に先へ先へと向かっている感じがして、どうにもやめられない。だから、車でどこかへ行くときには必ず車中泊がしっかり組み込まれている。車中泊でも、限界まで走れば眠るのはあっという間で、深い眠りにどっぷりと入ることができる。だから、朝の目覚めも悪くはない。

8時半には再スタート。朝になればますます眺めのつまらない山陽道だけど、姫路を越えたあたりから関西上空の分厚い雪雲が気になって仕方がない。案の定、西宮名塩まで来ると、あたりは真っ白で、エリア内にもどっかりと雪が残ってる。京都も、この調子なら結構雪が残っていそうだ。

10時前には京都入り。東寺あたりまで来ると民家の軒先にもたっぷりと雪が載り、梅小路公園も真っ白になっていた。
というわけで、まずは一枚目、梅小路公園。大きな広場のあちこちに、雪だるまが点在。すぐ近くを新幹線やJRも通っていくけど、なんだか心なし音のない世界。