場所は梅田からほど近い中崎町の「common cafe」。このカフェは、中崎町駅からほど近い古いビルの地下にある、日替わりオーナー制の小さなカフェ。設計したのは建築家の吉永さんで、2年前からのつきあいだ。
そもそも今回の「けんちくの手帖」とは、建築本を作りたい人たちのための連続レクチャーのような催しで、今回で4回目。ただこれじゃあいまひとつ分かりにくいので建築の手帖のHPから宣言文を引用しておく。
建築やまちづくりに関して一冊の本にできるほどのコンテンツを持っている人は少なくありません。個人で本を出版することは経済的・流通的に難しいことですが、それでも自らの思いを本に託して世に伝えたいと思っている人はたくさんいるはずです。
「けんちくの手帖」プロジェクトは、そうした欲求を持つ人々と”けんちく本”を集めて、既成の出版とは違うルートで世に広めることをたくらむ有志の集まりです。
その手始めに「カフェでしか読めないけんちく本」という企画を始めます。これは大阪、中崎町のカフェ「Common Cafe」の本棚に面白い内容にも関わらず本屋や図書館では扱っていないけんちく本を並べ、業界の方はもとより一般の方にも読んでもらおうという企画です。
また、この企画と連動したイベント”architects’ BAR「けんちく本つくりたい人集まれ」”を3ヶ月に一回ぺースで行います。有名無名を問わず興味深いけんちく本を作っている方々をゲストスピーカーに招き、自らのけんちく本について熱く語ってもらうイベントです。
建築について面白いアイデアやデータを持っておられる方は関西にもたくさんいらっしゃいます。しかし、それを紹介するメディアが乏しいため、そのポテンシャルは十分活かされていないのではないでしょうか。この企画がけんちく本のarchiveとして関西の建築メディアの一翼を担えればと思います。あなたも関西発の建築メディアを創立に参加してみませんか。
とまあこんな感じのイベントなので、「高知遺産」はまさにドンピシャ。今回は特に「自費出版で、既に本を出しましたが、その過程とこれから」について語るべしとの命を受けて、東京に続き大阪デビューを果たしたというわけである。
高知遺産から出席したのは、おいらとイドカメラ。高知からはるばるイドカメラ号にてのんびり4時間かけて(デミ子なら3時間)大阪入り。しかも梅田、神戸、東大阪とこの日は阪神高速各地での事故があり、大阪周辺の道路のあちこちが大渋滞。結局豊中から市内に入るまで1時間半以上かかってしまった。
開場は7時。それまでにとりあえずmacminiを据え付けして、「失う前に、もう一度。」展の時に使ったスライドを流しっぱなしにしておく。そして8時前からは三味線の演奏が始まり、会場もいつのまにか30人くらいのほぼ「満席」に。
レクチャーの詳しい内容はたんぽぽさんの日々雑記を参考にしてもらった方が客観的で分かりやすいと思うけど、前半40分はkeynoteを使いながら「高知遺産のはじまりから出版に至るまでの戦略と歴史、これから」をおいらが説明。そして中盤40分くらいは「失う前に、もう一度」から高知の風景をおいらとイドカメラが説明、後半は12時過ぎまで質疑応答等々。。。結局4時間以上喋り続けていた勘定になる。
ここで改めて知ったのは、「高知遺産」という本が、偶発的になのか必然的になのか、悲しい街の現状を取り上げながら、ある意味爽やかにしなやかに、そのことがまとめられた一冊に仕上がっているということだった。
また、今回この本であえて軽くしか触らなかった、「街のこれから」の部分をいかに今後提案していくか、そのことが大変重要な課題であるということも。このことは、たんぽぽさんが書いてくれている「『高知遺産』の場合、「知らんかった高知が載っちゅう」ということで買われても(販売としてはここまでで目的達成かもしれんけど)、そっから先の「失う前に、もう一度」の受容のされ方(こっからは利益抜きの作り手の想いのベクトル?に関わってくる域かなぁ)はまた幾つかに分かれてくると思います。」というのが端的に示してくれているんだけど、出版以後も次々と消えていく遺産を前にして、何もできないこの歯痒さを何とか解消していくためにも、必要なことなのかなと。
まあそれ以外にもたくさん思ったこと考えさせてくれたことはありますが、ここではこれ以上書きません(笑) 次のステップできちんとおいらたちが実現していきたいと思いますので。
ちなみに、東京のポポタムの時には、1ヶ月の高知遺産展の間に、高知遺産のトークを1回、沢マンのトークを1回(VTR1回)の計3回をやった。あらあら、なんだか微妙な高知ブームだなー池袋では・・・とか思っていたら、今回の「けんちくの手帖」でも今回は「高知遺産」をやり、次回1月には沢マン研究家の第一人者加賀谷君による沢マンのレクチャーをやるのだとか。なんだか高知のディープなところが徐々に取り上げられつつある感じですなあ。
ちなみに、アルネやクウネルでは、「ライト」高知がどんどん取り上げられていっている。セブンデイズホテルとか日曜市とか、主に梅原さんの関係でどーんと。最近では「沢田マンションにあの人が!」でも書いたように、料理研究家の高山なおみさんまでやってきた。
いままで、高知はなんだか特に中央から取り上げられることもなく、いつまでたっても龍馬関係でしかネタにならないような感じになっていたけど、ここ数年でかなり風向きが変わりましたな、なんてことも静かに感じた一日でございました。